WA03



 ■ ■ ■ ■ ■ Opening ■ ■ ■ ■ ■

 ブツッ、と電源の入る音がして、TVが点く。
 午後のワイドショー番組。
 それを煙草をふかしながら見てる久保田。

久保田「(呟くように)物騒な事件が多いねぇ」

 バタンと、遠くで玄関が開いて閉まる音。廊下を通って、居間に
 時任が入ってくる。

時任「…ったく、あの郵便受け、建て付け悪イよなぁ…。
   (郵便物をガサゴソとより分けて)くぼちゃん、朝刊。」
久保田「(新聞受け取って)んー」
時任「と、夕刊。」
久保田「あらら」
時任「電気とガス代の明細、ここ置いとくぞ」
久保田「んー、さんきゅ。…なに、すごい量のチラシだね今日は」
時任「(チラシの山をかき分けながら)車の広告、不動産のチラシ、
   デパートのセール……おっ、マックの割引券〜!」
久保田「…マック、昨日食べたじゃない」
時任「あとは……と(チラシかきわけて)
   『出張ヘルス・若奥様桃色天国』
   ……ってなんじゃこりゃ」
久保田「何って、ピンクチラシでしょ。」
時任「ふーん、こーゆーのピンクチラシって言うの?」
久保田「よく街中で、電話ボックスとかにも貼ってあるじゃない。
    『ルンルンハウス・女子高生大放出』とか、
    『熟れ頃マダムのセクシーテレフォン』とか」
時任「……なんでそんな詳しいんだよ」
久保田「パターンだもん」
時任「30分で1万5千円〜!? 高ッ!!」
久保田「天国も高くつくんだねえ」
時任「……なぁ、久保ちゃん」
久保田「ん?」
時任「(意味深に)同じ30分でも、もっと安く済む天国なら知ってるぜ」
久保田「……なーに」
時任「(元気にチラシを見せて)じゃーーーーん!!
   30分以内でお届け!!」
久保田「宅配専門『ヘブンズ・ピザ』……」
時任「(うきうきと)半額券ついてるから2枚頼んでいい?」
久保田「……天国も大安売り。」


 ■ ■ ■ ■ ■ Ending ■ ■ ■ ■ ■

 居間でかかっているTV。夜のバラエティー番組。

時任「(ぐったりと)……もー、食えん……地獄じゃ……」
久保田「さっき天国だって言ってたじゃない。
   (煙草ふかしつつ)欲張ってピザ3枚も頼むからっしょ」
時任「だってよ〜、あんなに種類あったらどれにしようか迷うだろ」
久保田「俺が食べたかったトロピカルデラックス、却下したくせに」
時任「かーーーーっ! あーのーなぁ、パイナップル乗ってるピザなんざ
   邪道だっつーの」
久保田「そんなのイタリア人に聞いてみないと分かんないじゃない」
時任「イタリア人がどう言おうが、俺様が邪道っつったら邪道なの!
   ありえねーのっ!!」
久保田「(間)……………ふぅん。」
時任「…………な……なんだよっ」
久保田「(溜め息ついて、嘆かわしく)…趣味とか嗜好とか、
    そーゆー些細なトコからこうやって亀裂が生じるんだなあ…」
時任「……う?」
久保田「しょーがないよねぇ、うん。…よく離婚の理由で聞くからね。
    “お互いのちょっとした感性の違いが引き金だった”とかさ…」
時任「……く、くぼちゃん?(汗)」
久保田「(エスカレート)いや、お前は悪くない。悪くないよ。
    悪いのは、お前の事を理解してやれなかった俺の狭い心……」
時任「だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!
   悪かった、俺が悪かった!!!!!
   パイナップルのピザ万歳!!イタリア人最高〜!」
久保田「(まだイジケ気味に)イタリア人は関係ないと思うんだけど……」
時任「こっ、今度はくぼちゃんの食べたいモン食っていいから!!
   くぼちゃんの好きな物は俺も好きだから!!なッ!?」
久保田「(ボソッと)…タピオカのパフェ」
時任「ぐげ」
久保田「タピオカのパフェが食べたい。今食べたい。」
時任「…いっ、今ぁ!? さんっざピザ食ったばっかじゃねーかよ!!」
久保田「甘い物は別腹、乙女の基本?(かわいらしく)」
時任「き……気色ワリ……」
久保田「はい、そうと決まったらファミレスへご〜」
時任「(ブツブツと)…なっんか、納得いかねーな……第一よ、
   俺は昔っから甘ったるいモンが……」
久保田「なーに?」
時任「(心なく)大好き〜。」

 TVの電源がブチッと落とされて。

                 END.

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ドラマCDのオープニングとエンディング用に書き下ろした、ショート
シナリオです。前の2本と比べて軽いテイストなのは、このCDの主題歌
がしっとり目だったので、全体の流れのバランスをみたカンジです。
ただのバカップルになってしまった。

………いつもか。

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